先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第192話 平民の守り手
それからさらに、みんな年を一つ取った頃。
サスペンションの開発が、ようやく完成していた。
サスペンションは、主にスプリングとダンパーという二つの部品からできている。
スプリングは素早く縮み、ダンパーはゆっくりと縮む。これらを組み合わせることにより、快適な乗り心地を実現するのである。
スプリングだけで衝撃を吸収した場合、揺れ戻しが大きくなってしまう。そのため、ふよふよととても乗り心地の悪いものになってしまい、簡単に車酔いしてしまう。
そこで、ダンパーの登場となる。
ダンパーは別名をショックアブソーバーといい、空気の層と油の層の組み合わせでできている。
これは、油の容器に接続された棒を伸び縮みさせると、ゆっくりと動く性質を利用している。しかし、油だけでは抵抗力が大きすぎるため、空気の層も併用するのである。
このダンパーには主に二つの種類があり、それぞれ単筒式と複筒式と呼ばれる。
今回は構造が単純な、単筒式を採用している。
単筒式のダンパーは油の層と空気の層を直列に配置し、それらをフリーピストンと呼ばれる部品で隔てた構造になっている。
しかし、単筒式のダンパーは構造的にどうしてもストロークが短くなるため、硬い乗り心地になってしまう。
そのため、本来であれば、フラットなサーキット場を高速で走り抜けるレースカーなどのスポーツタイプの車に適している方式である。
しかし、ダンパーが全くないよりははるかにマシであるし、工作難易度も考えて、この方式に決定していた。
完成したサスペンションの試作品の耐久テストや微調整を行うために、乗合馬車に取り付けさせてもらっていた。
そうすると、乗り心地が格段に良くなったと評判になり、瞬く間に噂が広まることになった。
「ぜひとも、ウチの馬車にもさすぺんしょんを取り付けてください!」
このような要望が、すぐに殺到するようになっていた。
そのため、トッキョを取って製法を一般公開し、各工房で製造、販売をしてもらっていたのだが、その購入を巡って、トラブルも起きるようになっていた。
貴族の関係者が、その権力を笠に着て予約を守らなかったり、買い叩いたりしていたのだ。
どうにかして欲しいとの陳情を受けた私は、さすぺんしょん専門の販売店を私名義で新たに立ち上げ、この店を通してのみ販売する制度に変更した。
そして、面倒な貴族の客が来た場合は、全て私に回すように周知徹底させた。
大嫌いな貴族どもを優遇するつもりはさらさらなかったため、以下の様に言い放って全て追い払っていた。
「どうしても売って欲しければ、きちんと順番を守って適正価格で買いなさい」
かつてのルツ工房の従業員だった時代のように、しつこい輩には、魔法を使って即刻ご退場願っている。
貴族を一切特別扱いせずに矢面に立つ私の姿と、さすぺんしょんのトッキョ料も全てダイガクに寄付していたことも相まって、私は以下の様に褒め称えられるようになっていた。
「初代様は、我ら平民の守り神様だ!」
しかし、私はそれが心苦しくて、以下の様に何度もお願いしていた。
「神様に例えられるなど、不敬が過ぎますので、その呼び方だけは止めてください」
そうすると、次第に以下の様に言われるようになっていった。
「平民を守護してくださる、平民の守り手」
こうして、私に新たな二つ名が増えたのであった。