Novels

先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第29話 最初の仕事

 私が魔道具職人となって最初に行った仕事は、魔道具に使われている魔法式の最適化だった。

 私が無詠唱魔法の使い手である事を親方はとっくに知っており、次のような指示を出していた。

「お前は魔導師様なのだから、魔法式を理解して改良する事もできるはずだよな?」

 親方から高価な本を貸してもらい、そこに書かれていた魔法式を解析してみた結果、もう少し最適化できた。

 里のものよりも改良が進んでいた事から、やはり、ヒム族は進歩的で技術改良に熱心なのだろうなと感じていた。

 ただ、無詠唱魔法が使える魔導師は、戦闘に参加するような職業にけば簡単に大金がかせげてしまうため、通常であれば魔道具師にならない。

 しかし、ごくまれに趣味で魔道具を作る魔導師が現れるらしく、少しずつ改良されてきたようだ。

「親方、魔法式が少しだけ短くなりました」

 私がそのように説明しながら魔法式を見せると、内容を理解できない親方は、長さだけを比較してものすごくおどろいていた。

「こんなに短くしてしまって、本当に動くのだろうな?」

 不信がりながらも親方は試作品を作り上げていた。

 そして、動作を確認した結果、私の評価がうなぎ上りになった。私が行った改良は、魔導師数世代分を優に超えるレベルだったようだ。

「おおっ! こんなに短くしているのに、どこにも動作に不具合がない! お前、実はすごい魔導師様だったんだな!!」

 そう言いながら、親方は私の背中をバンバンとたたいて大喜おおよろこびしていた。

 められすぎて、逆に恐縮してしまいそうになる。

 その後、私は親方の従来の魔道具について教えてもらいながら作り、時々、新しい魔道具の提案もしていた。

 最初に考えたのは、扇風機せんぷうきだった。

(モーターの魔道具がありますから、そのくらいの応用は簡単ですよね?)

 そのように考え、試作品を作って親方に見せてみると、次のような指摘を受けるはめになった。

「送風の魔道具があるのに、わざわざ羽を回して風を送る意味がわからん」

 言われてみれば盲点もうてんだった。風を直接操作する魔法があるのだから、扇風機せんぷうきを作る意味がなかった。

(羽を回して風を起こす意味がないのであれば、水を動かせばいいのではないでしょうか?)

 そのように考えを進め、電動ポンプの魔道具の試作品も作ってみた。

 親方に見せてみると、これもまたぼつになった。

「あのな、ヒデオ。お貴族様は給水の魔道具があるから、そもそも水をみにいかないし、平民だと高すぎて手が出ない。それを開発するぐらいなら、給水の魔道具の廉価版れんかばんの研究をしろ」

 そう指摘を受けた。

(前世知識さえあれば簡単にかせげるものを開発できると思っていましたけれども、これは、なかなかに難しいですね)

 私はそのように痛感つうかんしていたが、もっといいアイデアはないかと考えるようにもなっていた。