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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第42話 護衛の旅

 今、私たちが護衛しているのは、砂糖を運ぶ商人の馬車だ。

 この国の南部にある港町周辺では、サトウキビによく似た植物が栽培されている。というか、私の目にはそのままのサトウキビにしか見えない。

 砂糖の精製技術が未熟なのか、白砂糖は無くて全て黒砂糖になっているが、これがなかなかの高級品になっていて、ある程度以上裕福な平民でないと口にできないものになっている。

 この商人の護衛パーティーは六人編成になっていて、半分の三人が私と同じ傭兵団の同じ分隊の仲間になっていて、残りの三人が別の傭兵団に所属している混成集団になっている。

 この中で、私の分隊に所属している二人が、男性の方がエルクで、女性の方がルースという名前だ。

 どちらもまだ十八歳と若く、私とほぼ同時期に入団した同期生たちだ。そのため、自然と会話をする機会も多くなっていて、団員の中では一番仲のいい仲間だ。

 この二人は幼馴染おさななじみらしく、だいたいいつも二人そろっている事が多いのだが、付き合っているわけではないらしい。

 傭兵はいろいろな事情をかかえたものがなる事が多いため、過去の詮索せんさくはマナー違反になっている。

 そのような背景もあり、本人たちが話題にしないため、この二人の出身地は誰も知らないが、おそらくは元自由民だろうなと周囲のみんなは薄々うすうす感じている。

 二人とも十六歳という成人したばかりの年齢で入団していて、その確かな実力から、若手のホープとして周囲から認識されている。

 エルクはいわゆる細マッチョという体型をしている。

 着やせする見た目に反して非常に力が強く、大型の魔物の突進とっしんも、盾を使って真正面から受け流してしまう。

 いわゆる壁役かべやくである。それも相当優秀な。

 ルースはなんと魔導師だ。

 つまり、ヒム族ではかなり希少きしょう無詠唱むえいしょう魔法まほうの使い手である。彼女のあつかう魔法を観察してみれば、魔力制御力もかなり優秀である事が見て取れる。

 私の知っている限りになるが、特殊な種族の私を例外としてカウントすれば、ガルムの都市最強の魔法使いだ。

 エルクが受け止め、ルースがとどめを刺す。

 見ていて美しささえ感じさせる、流れるような連携れんけいを見せる二人である。

 私が悪目立ちしてしまっているせいで、実力の割に周囲の評価が低すぎるというのが、私の見立てになっている。

(今回の護衛任務では、残りの三人にちょっとやる気が見られませんので、この二人が一緒のパーティーに入ってくれて本当に助かりました)

 私はしみじみとそんな事を考えながら、護衛の旅を続けていた。