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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第57話 分度器

 冷蔵庫の開発を初めてから、二年ほどが経過した頃。

 行き詰った開発をいったんたなに上げ、新たな金策を考えながら日々を暮らしていた。

 ちなみに、この時の私の家族の年齢は、私が七十一歳、エルクとルースが三十七歳、エストが十一歳、メイが六歳である。

 メイはそろそろ、私の学校に通い始める年齢になっていた。

 一方、エストは三年で修了しゅうりょうする学校を卒業していて、私がもう少し高いレベルの算数を教えるようになっていた。

 私の学校で教えているのは、ある程度のけたまでの筆算ひっさんを利用した四則演算と、文字の読み書きといった基本的なものだけだ。学校の共有財産として、何冊かの本も用意している。

 エストはとても頭が良く、学校を卒業後に私が個人的にレッスンしてみたところ、一年ほどで素数や最大公約数、最小公倍数等をマスターしていた。

「おじい様の教え方がいいからです」

 そんな、とてもうれしい事をエストは言ってくれている。

(この子は天才な上に、かわいさでもこれほどですか……)

 はい、間違いなく私がジジバカです。

(次は少数と、円周率なんかを教えてみましょうか)

 そんな考えの元、私は今、分度器を作るための作業をしている。

 この国にも角度の単位はあるのだが、私には扱いにくいのと、いずれは三角関数で弧度法こどほうを教える事を目指しているため、思い切って、一周三百六十度の度数法どすうほうを教える事にする。

 そのためのオリジナル分度器の作成だ。

「私の故郷でのオリジナル単位です」

 生徒たちには、そのように説明しておけばいいだろう。

 私は、まず、土魔法を使って少し厚めの正確な円盤えんばんを作り上げる。自慢じまんの魔力制御力を使えば、この程度は簡単だ。

 この時の円盤えんばんは、後の作業を考えて少し大きめに作っておくのがポイントだ。

 次に直径の長さを測定し、円周率の3.14を掛け算して円周の長さを求める。

 この長さのひもをまず用意し、その長さを360で割り算して1度単位の目盛めもりを刻んでおく。

 後は、このひもを先ほど作っておいた円盤えんばんに巻き付け、円周部分に1度単位の印をつける。

 円周上に付けられた印から円の中心に向かって線分を引いていき、360分割された円盤を作る。ちなみに、円の中心点は、0度から180度、90度から270度に向かって線を引き、交差した点で求められる。

 ここまでできれば、これを原盤げんばんとして木工職人に発注し、半円状の180度を1度単位で計測できる分度器を特注で作ればいいだろう。

 また、今後を考え、毎年一定数の特注分度器の作成も注文しておく事にする。

 ついでとばかりに、二種類の三角定規も発注しておく。