先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第70話 初ひ孫と成人したメイ
エストの結婚式から、二年ほどが経過した頃。
つい最近、ローズさんは待望の第一子を出産していた。生まれた子供は女の子で、ネリアと命名された。現在0歳の玉のような赤ちゃんだ。
私にとっては、初めてのひ孫になる。
エルクとルースは初孫をとても喜び、現在では、二人で競い合うようにして熱心にネリアの世話を焼いている。
エストは、いつか再び私の里まで旅行し、自分の新しい家族をひいおばあ様に紹介したいのだそうだ。
ただ、さすがに魔物の領域を突破する街道で、幼い子供を抱えて旅行を行うのは不可能だと考えているらしく、奥さんだけでも紹介したいのだそうだ。
ネリアのおかげで少し賑やかになったガイン家は幸福に包まれており、温かい笑い声が絶えない家になっていた。
ネリアの誕生と時期を前後して、メイは十六歳になっており、成人していた。
私にとっては少し残念な事に、メイは年齢を重ねていくと、あまり魔道具に興味を示さなくなっていた。
不治の病と大変失礼な事を考えていたが、ブラコンも完治したのか、メイは恋人候補をようやく私に紹介した。
一人の男性を伴って私の部屋を訪ね、すぐに用件を切り出した。
「おじい様、この殿方を教育してください。できるだけ厳しくお願いします」
その後、改めてメイが紹介してくれたこの男性は、ゴランさんという名前だそうだ。
現在十七歳のかなりがっしりとしたイケメンである。茶髪を短く刈り込んでいて、少し日に焼けた肌色をした、健康的な体つきをしている。
メイによれば、あくまでもまだ恋人候補であり、恋人ではないらしい。そこにメイのこだわりが感じられたので、特にツッコミは入れていない。
成人したメイはとても美しく成長していて、かなり男性にモテるのだとか。
エルクは、メイが結婚して独立した時点で、自分の貴族権限を使ってメイを一代限りの名誉貴族にするつもりのようだ。
ただ、この噂が広まってしまった結果、少し困った問題も発生していた。
次期領主のエストが平民を平然として奥方に迎え、領主もその家族も、誰もそれに反対しない様子を見た一部の領民は、逆玉の輿を狙ってメイに近づくものが現れ始めていた。
「殿方のほとんどは、私の貴族の地位が欲しいだけです。下心が簡単に透けて見えますわ。その中では、このゴランがかなりマシな部類だったのです」
メイによる、ゴランさんへのかなり失礼な評価である。
ただ、このゴランさん。メイにぞっこんな様子で、メイの自宅に招かれただけでも、デレデレしっぱなしである。
私はメイが席を外したタイミングを見計らい、ゴランさんに発破をかける。
「ゴランさん。メイはツンツンした態度をとっていますけれども、私は十分に脈があると考えていますよ?」
ゴランさんはウンウンと大きく頷き、その体格に見合った大きな声で返答する。
「先代様もそう思いますよね!」
ゴランさんは、既にその気になっているようだ。
「ただ、メイの理想の殿方はお兄様です。頭が良くて強い人が理想だと、周囲には常々言っているでしょう? エストほど頭が良くなるためには、かなりの努力が必要になってきます」
ゴランさんは迷うそぶりも見せず、ややかぶせ気味になって即答した。
「全力で努力します!」
私は微笑みながら、努力させる方向に誘導していく。
「あのエストでさえ数年がかりで覚えた内容を、私は二年で、あなたに教えるつもりです。かなり厳しく教えるつもりですが、覚悟はいいですか?」
私は少し、脅しをかける。その後にバラ色の未来を提示し、努力を促していく。
「あなたが、もし、二年で私の教育を完了する事ができれば、メイもあなたを見直して、もっと惚れてくれるはずです。そうなれば、メイと所帯を持つ事も可能でしょう。かなり険しい道になりますが、やる気はありますか?」
ゴランさんは大きく頷き、今日一番の大声で返答していた。
「もちろんです! 未来のおじい様!!」
既におじい様呼ばわりはちょっと行き過ぎのような気もするが、あえて無視する。
こうして、私とメイによる理想の殿方育成計画は発動した。
メイが婚期を逃してしまわないように、私は本気で、二年で教育するつもりだ。