先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第75話 謎の超技術
レイゾウコの魔道具の試験販売開始から、半年ほどが経過した頃。
レイゾウコは爆発的大ヒットとなり、受注に対して、生産が全く追いつかなくなっていた。そのため、予約生産性を採用したのだが、既に半年先まで予約でいっぱいになっている。
私にとって意外だったのは、予約先に、多数の同業他社の魔道具工房の名前があった事だ。
これは、分解してコピー商品を作ろうとしたためなのだそうだ。こっそりとコピーを作るのではなく、堂々と予約するその姿勢に、私はむしろ感心していた。
ただ、これらの試みは全て失敗に終わる。
冷媒や断熱材や密閉用のゴムの考え方が全く理解できなかったようで、そこになぜそれが必要になるのかが分からず、適当なもので代用していた事が主な原因だ。
特に、分解した時に発見される、密閉された空間内部に安置された数本の火の消えたロウソクは、完全に意味が分からなかったようだ。
また、複数種類の魔法式のプレートが存在し、それらが銀線で接続されている理由も、理解できなかったようだ。
もし、彼らの中に魔法式が解析できる魔導師が一人でもいたのであれば、これは複数種類のプレートを連動させる、失われた技術だと気づいたかもしれない。
だが、そのような人材はいなかったらしい。
(少し考えれば、連動させているのは分かるでしょうに)
そのように考えていたため、なぜ彼らがそこに思い至らないのかと首を傾げながら、魔道具業界に怒涛の様に流れる各種の噂を聞いていた。
私が後に解説本を出して答えを提示するまで、彼らは一種類の魔法式をなぜか三分割していると考えていたようだ。
開発されたコピー商品は、巨大な上に冷却効率もかなり悪く、さらに価格も、ヒデオ工房の純正品よりも高かった。
その上、魔力効率も最悪で、ランニングコスト的にも相手にならなかった。これは、例の秘伝の塗料が使えなかった事に原因がある。
あの塗料を使えば魔力伝導率が飛躍的に上がるため、それ以上なにもしなくても消費魔力量がかなり低くなる効果もあるためだ。
そのような状況であったため、それらのコピー商品を購入した客からは、次のような声が上がっていた。
「高額な粗悪品を売りつけやがって!」
納入した魔道具工房には、非難が殺到していた。
そのように、急激に信用を失った先発の工房たちの様子を見た後発の分解希望の工房たちは、コピー商品開発から手を引いていった。
私の作るものは、謎の超技術が使われていると言われ始めるようになった。
「ヒデオ工房の商品のコピーは作るな。作れば、こちらの信用が下がる」
そのように、業界で広く言われるようになった。
また、ルツ工房はコピー商品開発に最初から手を付けず、予約注文の中にも名前がなかった。
この理由は、少し後に、代替わりしていたルツ工房長によって知らされる事になる。
一方、我らがヒデオ工房では、増産体制を整えるために新たに職人と弟子を雇用していて、工房も引っ越して規模を拡大していた。
この引っ越し作業は、商品を生産しながら同時進行で行ったため、かなり苦労した。