先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第181話 シズカのお婿さん
イサミの結婚式から、またしばらくの時が経過した頃。
シズカも結婚式を挙げていた。
その結婚式の会場で、父親であるリョウマは号泣していたのだが、これは、娘を取られる悔し涙ではなく、無事にまともな結婚ができて良かったという嬉し涙であったのは、ご愛敬だろう。
シズカはイサミと正反対な性格で、剣術や馬術といったものを好む、とても勇ましい女性に成長していた。
つまり、イサミは勇ましくなく成長し、シズカは静かではなく成長していた。
(なんだか、シズカの方が巴御前っぽくなりましたね)
私はそんな感想を抱いていた。
ちなみに、巴御前は木曽義仲の愛妾で、前線に出て戦う勇ましい女性だ。
そのように成長したシズカは、実は一部の男性たちから非常に人気が高かった。むしろ、崇拝されていたと言っても過言ではないだろう。
しかし、彼らの性癖が、非常に問題になっていた。
彼らはシズカに罵られると恍惚な表情を浮かべ、それを気味悪がったシズカがキレて足蹴にすると、嬌声を上げながら歓喜してしまう始末である。
現代の割と進んだ寛容さを持っている私であっても、これにはドン引きしてしまったぐらいなので、シズカはほとほと困り果てていた。
「大おじい様。あの気色悪い連中を、少しでも遠ざける方法はないものでしょうか?」
ある日、私は俯き加減で顔色の悪いシズカから、そんな悩みの相談を受けていた。
私もなんとかしてあげたいと思っていたため、げんなりとした様子のシズカを視界の端にとらえながら、しばらく腕組みをして顎に手を当て、必死に頭を回転させる。
「そうですね……。あの連中は、あなたに痛めつけられるとかえって喜んでしまいますから、別の人に排除してもらうのはどうでしょう?」
シズカは、まさか具体案が出てくるとは思っていなかった模様で、ガバッとこちらに顔を向け、食いつき気味に先を促す。
「と、いいますと?」
「あなたのお眼鏡にかなうほどの強い男性を、正式な彼氏として常に行動を共にするようにするのです。そして、その彼氏に、あの気色悪い連中を物理的に排除してもらいましょう」
「それです! さすがは大おじい様! 大好きです!!」
シズカはそう叫ぶと、私の胸に飛び込んでくる。
私の胸で幸せそうに頬をこすりつけているので、よほど嬉しかったのだろう。
(しかし、この場面をクリスさんに見られると、怒られてしまいそうですね)
もうすっかりと大きくなったシズカを見ながら、私はそんな感想を抱いていた。
私がそんな余計なことを考えてしまっていると、シズカは私の背中に手を回し、ギュッと抱きしめた。
「ぅごふぅ……」
抱きしめる力が強すぎて、思わず変な声が出てしまうほどかなり痛い思いをしたのだが、そこは指摘しないでおいた。
この提案を聞いたシズカは、その足でガイン自由都市軍の宿舎へと直行していた。頻繁に彼らと私的な訓練をしていた彼女には、思い当たる男性がいたようだ。
そして、ガイン自由都市軍の中でも精鋭の男性に、ド直球で告白して付き合って欲しいと懇願したそうだ。
以前から面識のあった彼は、突然すぎる告白に驚きながらも、快く了承してくれたのだとか。
その様子はとても男らしかったようで、シズカの好みにもマッチしていたのだろう。
その彼氏はザインさんという名前で、ゴリゴリのゴリマッチョな屈強な男性である。武術は一通り得意な彼であったが、一番、得意としているのが無手での格闘術だった。
そのため、シズカ目当ての変態どもを見つけ次第、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返している姿が、度々、目撃されるようになっていた。
彼に投げ飛ばされた変態どもは、口々にこう叫んでいたのだとか。
「こんなムサい男に投げられたいわけではない!!」
そして、その場で崩れ落ちて、さめざめと泣いていた。
自分の彼氏のそんな雄姿に、シズカも大いに惚れ込んでゆき、そのまま晴れてゴールインとなったのであった。