先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第202話 ガイン自由都市の宝石
それからさらに、三年ほどの時が流れ去った頃。
蒸気機関の研究は順調に進んでおり、今では、ある程度の大きさの鉄道模型を使った実験が行われていた。
(当初に覚悟していたよりも、かなり短い期間で開発が完了しそうですね)
私は日々進む研究に、確かな手ごたえを感じていた。
また、島の里で産出している魔石も順調に流通しており、魔石の価格も若干の落ち着きを見せ始めていた。
そして、この頃になると、セリアは二十歳になっていた。
彼女が赤ん坊の頃に予想していた通りに、とても美しく成長していた。両親に似てとても知的な女性にもなっており、どこかかつてのネリアを彷彿とさせる、丁寧な物腰の淑女でもあった。
そのため、周囲からは、次第に「ガイン自由都市の宝石」と呼ばれて称えられるようになっていった。
そんなセリアを振り向かせようと、男性陣が熾烈な争いを繰り広げていたのも、予想の通りであった。
まだ幼い時分からモテモテであったため、父親のイサミが渋い顔をしながら、以下のように言っていた。
「まだまだ、あなたたちは一人前とは認められませんので、セリアは絶対に誰にも嫁にやりません」
このようなセリフを、口を酸っぱくして繰り返していたのも、今となってはいい思い出になっている。
そんなセリアも、昨年には恋人を家族に紹介していた。イサミもさすがに、まだ一人前でないとは言えなくなっていたようで、しぶしぶながらも紹介を受け入れていた。
そのお相手はカルロさんという名前で、若手の官僚として働いているそうだ。
その彼の周囲からの評価は、以下のようなものだったらしい。
「真面目なこと以外に取り柄のない、面白みのない人」
そんな陰口を叩かれてしまうほど、真面目で誠実な青年だった。
(カルロさんはどこかレオンさんに似た雰囲気ですし、やはり、セリアはネリアに似ているのでしょうかね?)
私はそんな感想を抱いていた。
そして、今日。セリアとカルロさんの結婚式の日だ。
周囲には既に、血の涙を流しそうな男性たちが、多数、やけ酒を煽っている。そんな男性陣の怨嗟の視線を受けながらも、式はつつがなく終わりを迎え、今は披露宴が開かれている。
セリアとカルロさんは、まず両親であるイサミとリリアさんに挨拶を済ませていた。
その席でイサミの顔が憮然としていたのは、まあ、ご愛敬のうちだろう。
その次に私のところへと来たセリアは、ずっと疑問に思っていたらしい内容についての質問を始めた。
「私がカルロ様を紹介した時、大おじい様は、一人だけ、納得の表情をしておられました。その理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
私は少し笑顔になり、正直にそれに返答する。
「四代目領主のシゲルの姉に、ネリアという女性がいたのですが、彼女とあなたはそっくりなのですよ。ネリアも、とても真面目で誠実な男性を旦那様に選びましたので、ああ、なるほどなと思ったのです」
このような一幕もありながらも、披露宴も無事に進行していった。
ただ、周囲には酔いつぶれた男性たちが、死屍累々といった様子であちこちに積み上がっていったのだが、まあ、触れないでおくのが優しさだろう。