先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第204話 文明の父
それから、また年を三つほど重ねた頃。
ようやく、蒸気機関の列車の開発が完了していた。
ターミナル駅となる予定のガイン駅は、今後のことを考えて少し郊外に建設されていた。第一街壁の内側の地価が高騰しすぎていたため、商業地域の分散を図ったのだ。
駅舎は最新の工法である鉄筋コンクリート製であった。まだそこまでの高層建築にはできなかったのだが、地上三階建てのかなり大きな建物になっている。
試作機の列車が、度々、郊外を走行していたこともあり、列車のお披露目の際には、それほどの混乱は起こらなった。
しかし、鉄道の開通式典の折、以下のような発表が行われた際には、大きなどよめきが起こっていた。
「このキカンシャには、一切の魔力が使われておりません。純粋な物理法則のみを使って動作しています」
この発表を聞いた招待客たちは、みんな以下の様に発言していた。
「とても信じられない」
そして、左右の人と顔を見合わせていた。
このような状況になるだろうということは前もって周囲から指摘されていたため、蒸気機関の簡単な模型を用意して原理などの説明を行い、間違いなく魔力を用いずに動いていることを証明した。
新しい技術には慣れっこになっていたガイン自由都市の住民たちにとっても、これは驚愕の事実になったようだ。
魔力を用いずにこれほど巨大な物体を動かそうとは、今まで誰も思い付きもしなかったのだとか。
このニュースは大きな反響を呼び、かなり長い間、国中を駆け巡ることになる。
この機関車の燃料は石炭になっており、現在の鉄道路線は、ガイン自由都市と近郊の炭鉱のみを結んでいる。
ちなみに、この国には製鉄業があったためなのか、石炭は普通に利用されていた。
この新しい路線は、今後のことを考えて複線になっており、よりスムーズな石炭輸送を計画している。
なお、この炭鉱の村はダロス村という名前で、そこの領主には無断で駅舎を建設している。原油の産地であるセネブの町の領主一族が、贅沢三昧な生活を送っていることから、反対はしないだろうと判断したためである。
すぐにでも都市になると思われていたセネブの町であるが、実際には町で発展が止まっている。平民の移動を厳しく制限した影響が、このようなところにも出ていたのである。
しかし、原油の需要は伸び続けているため、かなりの大金がセネブの町の領主一族に流れていた。
放蕩三昧の生活を送っていても使い切れないほどのお金が手に入る状況は、国中の貴族たちの憧れになっているらしい。
そのような状況であったため、私たちが駅舎を建設するのを、ダロス村の領主は黙認していたのだ。自分たちもあのような生活ができると考えているらしい。
新しい原理で動く列車の登場により、世間一般では以下の様に囁かれるようになっていた。
「これは、もう、新文明の幕開けなのでは?」
後にこの新文明は「魔法カガク文明」と呼ばれるようになり、鉄道の開通日をもって始まったとされた。
魔力もーたーと蒸気機関の組み合わせによる、魔法と科学のいいとこ取りをした新しい文明という認識のようだ。
私は新文明の立役者として「文明の父」と呼ばれるようになり、大変名誉な二つ名が増えたのであった。