先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第209話 二進数と論理回路
私はすぐにでも電卓の開発に取り掛かりたかったのだが、そのためには、デジタル回路の基本となる2進数や論理回路と呼ばれるものの知識が必須になってくる。
そこで、それらの専門書の執筆から始めることにした。
2進数の考え方については有名であるため、知っているという方も多いだろう。
0~9の数字の組み合わせで数を表現する通常の数え方が10進数である。それに対し、0と1だけを用いて数を表現するのが2進数だ。
そして、論理回路とは、2進数の計算を行う電子回路のことである。電卓に必要な加算器や減算機も、一種の論理回路になってくる。
これは、AND, OR, NOTと呼ばれる3つの基本回路から作る。
小難しい専門用語を並べてみれば、ANDは論理積、ORは論理和、NOTは否定と呼ばれる。
これらは、NANDと呼ばれる一種類の回路だけでも代用が可能であったり、同じ結果でも回路を単純化させる最適化が可能であったりと、いろいろと奥の深い学問の一分野になっている。
ただ、残念なことに、私はそこまで深く記憶していなかったため、ごく基本的な内容のみを専門書にまとめることにした。
これ以後は基礎研究課題として、ダイガクに丸投げしてしまう予定である。
一年ほどかけて専門書を書き上げた私は、これまでに高等学校やダイガクを設立してきた経験を活かし、先生役となる研究者の育成から始めた。
さらに一年ほどかけて研究者が育った時点で、彼らと相談して教科書の編集作業を進めた。
こうして、一歩ずつではあるが着実に準備を進め、さらに二年が経過する頃になると、ダイガクに新たな学科を立ち上げることができた。
『電気電子』工学科と名付けられたこの学科は、最初こそ人気のないマイナーな学科であったのだが、後にデンキ式のデンタクが発表されると、徐々に生徒数も増えていくのである。
「いつかは『プログラミング』可能な計算機も作って、本職の『ソフトウェア』の学科も作ってみたいですね……」
いつかは情報工学科も設立してみたいという、願望もあるにはある。
集積回路が作れたら最高なのだが、あれには、かなり高度な技術の積み重ねが必要になってくる。
「おそらく、『集積回路』が実現するほどの時間をかける前に、力を付けた平民たちによる革命が起きるとは思うのですが……」
私は、一人、領主館の自室でかなり物騒なことを呟いていた。