先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第26話 魔道具師見習い
私の魔道具師見習いとしての生活は、順調に進んでいた。
最初の頃こそ、私の種族名がばれたらどうしようと思っていたのだが、先祖返りは魔石の噂や伝説等から存在を知っていても、誰も本物を見た事がなかったため気づかれる事はなかった。
なんだか妙に耳の長い、変わったアルク族として認識されている。もしかすると、これが森アルク族の一般的な耳だと勘違いされているのかもしれない。
下積みとしての修行は、金属細工を覚えるものだった。これは、魔道具を作るためには細かい加工技術が必須になるため、見習いなら誰でも通る道らしい。
釘や蝶番のような簡単なものから始まって、今では、ある程度の細工物が作れるようになっていた。
六日に一度の休日になると、近場の森の浅い所で狩りをして腕を維持している。そのついでに魔石を石屋に、肉を肉屋に、毛皮を服飾屋にそれぞれ収めて小遣いの足しにしている。
やろうと思えば里の一般的な魔石も作れるのだが、それをやってしまうと、下手をすると親方よりも高収入な弟子になってしまうため、そこは自重している。
ちなみに、都市の住人が狩り等のために都市に出入りするのは無税になる。都市を出る時に門番さんに申請すれば割符を発行してもらえ、入る時にこれを見せると入街税が免除される仕組みになっている。
この都市の税制は、入街税と固定資産税、後は商店や工房等の規模による課税になるそうだ。戸籍制度のようなものはないらしく、人頭税等はかからない。税の種類が少ない代わりに、それぞれの税率はかなり高めになっている。
この国の貴族制度についても聞いてみた。
貴族の階級は三段階しかなく、それぞれ、下級貴族、中級貴族、上級貴族と呼ばれるらしい。日本の侯爵とか伯爵のようには細分化されていない模様だ。
だいたい、下級貴族が村の領主、中級貴族が町の領主、上級貴族で都市の領主と思っておくといいそうだ。
下級貴族であっても平民からすれば雲の上の存在で、下手にかかわりあったら、不敬罪で簡単に首が飛んでしまう。
ただ、お貴族様は貴族街からほとんど出てこないため、普通に暮らしていれば問題ないそうだ。
当初の予定よりもかなり里に近い場所に腰を落ち着けたため、年に一度ほど長期休暇をもらい、里帰りしている。
初めて里帰りした時には、涙を流して大歓迎されたのはいい思い出だ。
「これほど早く、戻ってきていただけるとは思っていませんでした」
このように言って、みんな喜んでくれた。
里は記憶と変わらない姿で、とても心が温まる。
(いつか世情に飽きて隠居する時は、必ず里に帰って骨を埋めましょう)
そう、心に固く誓う。