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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第63話 孫と里帰り

 アレスさんと一緒に途中の村で行商を行いながら旅を続けた。そして、数日が経過し、今、私の里にエストと一緒に到着している。

「これが、森の隠れ里……」

 エストが感動の声を上げている。そうすると、近くにいた子供が私を見つけ、近寄ってきた。

「あ! 祭司様だ! おかえりなさい、祭司様」

「ただいま、フィアナ。これ、お土産みやげのクッキーです。たくさんあるので、いつものように子供たちみんなで分けて食べてくださいね」

 私は背嚢はいのうからクッキーの入った袋を取り出してフィアナに渡す。この子は私が里を出てから生まれた、まだ二十歳くらいの若い子供だ。

 この里では、野生の蜂の巣かられる蜂蜜も手に入る。だが、そうめったに口にできるものでもないため、私が持ち帰る甘い焼き菓子は、子供たちに大人気の定番のお土産みやげになっていた。

 そんな私たちのやりとりを見ていたエストが、思わずといった様子でつぶやく。

「おじい様は、本当に祭司様と呼ばれているのですね」

 今度はその姿を見たフィアナが、私に質問を始めた。

「祭司様、その子、初めて見ますけど、新しい行商人さんですか?」

 私はそれに微笑ほほえみを返し、優しく返答する。

「この子は私の孫のエストですよ」

 それを受けて、エストが続けて挨拶を始めた。

「初めまして、フィアナちゃん。私がおじい様、いえ、祭司様の孫のエストです。よろしくね」

 それを聞いたフィアナは、少しおどろいたようにしている。

「祭司様、いつの間に結婚されていたのですか!? それに、お子さんが生まれていたのですね! おめでとうございます!」

 元気よく祝福の言葉を述べるフィアナに、私は少しだけ苦笑を交えながら、正解をげる事にする。

「結婚はしていないのですよ。この子は私の養子ようし、と言っても、分かりませんか。ええと、孤児こじを引き取って育てたようなものです。その子の息子になります」

 なんだか良く分かっていない様子ようすのフィアナに、私は話題を変え、祭司長の居場所をたずねる事にした。

「エストを里のみんなに紹介するのは、また後にしますね。ところで、祭司長様は、今、家ですか?」

 フィアナはうなずきながら返答してくれる。

「はい。祭司長様は、ご自分の家にいらっしゃると思います」

 それから、私とエストは祭司長の小屋に向けて、ゆっくりと見物を続けながら移動していく。

 里のみんなは、私を見かけると、こう言って暖かく挨拶あいさつをしてくれる。

「おかえりなさい、祭司様」

 私はその全てに、ただいま、と挨拶あいさつを返しながら歩いていると、エストがあるものに気づき、質問を開始した。

「あ、おじい様。もしかして、あれが前に話してくださったヒドケイですか?」

 私はそれを作った時の事を思い出しながら、若干じゃっかん目を細めて肯定する。

「ええ、そうです。かなり昔に作ったものになるのですが、今でも大切に使ってくれているようで、本当にありがたいですね」

 移動途中で、挨拶あいさつの終わった子供たちが水魔法を使った水遊びをしている姿を見たエストが、感嘆かんたんの声を上げた。

「おじい様に聞いてはいましたが、森の隠れ里の住人は、全員、魔導師なのですね。あんなに小さな子供まで無詠唱むえいしょうで自在に魔法が使えるのを見てしまうと、なんだか自信を無くしてしまいそうです」

 私は微笑ほほえみを返しながら、優しくエストをはげます。

「私の里のみんなは優秀ですからね。エストもヒム族としては魔法がとても優秀ですから、あまり比較しないようにしましょう」

 エストは力強くうなずいてくれた。

「そうします。ところで、おじい様。シユス村で聞いた、もしこの里とリスティン王国が戦争したら、王国が負けてしまうという話を本当だと思いますか?」

 私はあごに手を当て、そうなった場合を頭の中でシミュレーションしてみる。

「里のみんなは温厚なので、まず戦争にはならないでしょう。ですが、もしそうなったと仮定すると、ガルムの都市くらいであれば、簡単に攻め滅ぼせるでしょうね」