先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第67話 ガイン村からガインの町へ
エストと私による里帰りから、早いもので二年が経過していた。
エルクと私による領地の開発事業も順調に進んでいて、ガイン村は拡大と発展を続けていた。
今では、村と呼ぶにはかなり無理がある規模にまで発展している。
そのため、エルクは、ガイン村を正式な町とするための手続きを国王様に申請中だ。
また、私が探し当てたにがりの輸入も順調で、豆腐も量産されている。
にがりは、リスティン王国南部の港町周辺の塩田であっさりと見つかったため、砂糖を運搬している商人に頼んでツテを探し、にがりを輸送してもらっている。
「トウフ」に使う程度であればそこまで大量には必要ないため、今では安定した輸送ルートが構築できていた。
ワシ工房の稼働も順調で、日々、ワシとワラバンシを量産し続けてくれている。
ただ、ワシの原料となる木を大量に伐採するようになっていたため、私は近隣の森の乱開発を危惧するようになっていた。
そのため、種から苗木を育て、植林を行う技術の開発を最優先研究課題として行っている。
学校も既に専用の新校舎が完成していて、ガイン村の特産品であるワシを利用した教科書も用意されている。学校で雇用した先生たちと共に編集し、生徒たちに配布しているものだ。
ただ、まだまだワシも高価なため、一人一冊ずつ無料で配布する事まではできず、学校の財産として生徒たちに貸し出す形をとっている。
まだ幼い子供たちに貸し出すものであるため、汚損されて返却されるケースも多かったのだが、よほど悪質なケースでなければ咎めなくていい程度には、価格が下がってきてもいた。
工房の弟子たちも既に一人前に育っていて、工房の運営の多くの部分を任せられるようになった。
我らがヒデオ工房の魔道具も少しずつ人気が出てきていて、工房を引っ越して規模を拡大している。
この頃になると、発展した村の様子を聞きつけた他の貴族家から、我が家の財力目当てと思われるエストやメイへのお見合いのお誘いが来るようになっていた。
ガイン家の家族は、全員、これまで他の貴族家からさんざん平民上がりの半端貴族と見下されてきたのを良く知っているため、完全に無視を貫いている。
貴族たちの掌返しに、私もいい気分はしていない。
エストやメイには心から愛せる伴侶を見つけてもらい、幸せな家庭を築いて欲しいと切に願っている。
また、エストには約束通り、『いべんとはんどら』の魔法を伝授している。
ただ、私が登録している魔法は全て防御魔法だった。
そのため、これを起動している間は他の魔法が使えなくなるエストの事を考え、エストと相談しながら実験を繰り返し、攻撃と防御のバランスが良くなるように、登録している魔法をエスト専用にカスタマイズしている。
この調整により、エストは魔術師でありながら、一部の魔法であれば無詠唱で瞬時に起動できるようになった。
ただ、毎朝長い魔法式を詠唱するのだけは、とても大変そうであったが。