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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第85話 貴族年金と官僚の仕事

 メイの結婚式から、またしばらくの時が過ぎたころ

 私とエルクは、エルクの自室でお茶を飲みながらひそかに相談そうだんしていた。

「俺は当初の予定通り、メイに貴族年金を出すつもりだ。なあ、ヒデオ。お前はそれに反対なんだって?」

 今、この部屋には子供たちがいないので、エルクも昔のような口調くちょうで話を始める。

「別に反対しているわけではありません。ただ、仕事もせずに、年金だけをもらう状態じょうたいが問題だと思っているだけです」

 エルクは少し首をかしげ、続けてその意味を問う。

「それは、つまり?」

「年金だけをもらってしまうと、あの二人は、遊んでらすかもしれません。それは、あの夫婦にとって良い事ではないでしょう?」

 エルクは腕組うでぐみをして考え始め、続きをうながす。

「ふむ……。なら、ヒデオはどうすればいいと思っているんだ?」

簡単かんたんな話です。仕事を与えればいいのです。ゴランさんには高度な教育をほどこしていますから、彼を高級こうきゅう官僚かんりょうとしてやとうといいと思いますよ」

 エルクは納得なっとくした様子ようすで一つうなずいた後、許可を出してくれる。

意義いぎは理解した。ここは、ヒデオの案を取り入れて、ゴランを官僚かんりょうとして採用さいようしよう」

「ええ、それがいいと思います。私の故郷に伝わる古い格言かくげんで、働かざるもの食うべからず、というものがありますから」

 エルクは微笑ほほえみながら、話を続ける。

「やはり、ヒデオはいろいろと物知りだな。そうだ、たまにはルースと三人で、昔の親友同士で酒を飲まないか?」

「それはいい考えですね。昔話に花がきそうです」

 私も微笑ほほえみを返し、飲み会に了承りょうしょうの意を示す。

 その後に開かれた、三人での自宅での飲み会は、ワイワイと昔話を楽しんだ。

 ただ、エルクとルースももう年なので、あまりたくさんは飲まず、私もチビチビとしか飲まなかったので、醜態しゅうたいをさらすようなものは誰もいなかった。


 これはずっと先の話になる。

 メイとゴランさんのおこした家は、ガイン家の分家ぶんけとして、代々、官僚かんりょう輩出はいしゅつするようになる。そして、リスティン王国が崩壊ほうかいしたその時には、その子孫が閣僚かくりょうの一人となって、新国家をささえていくようになるのである。