Novels

先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第126話 ガイン自由都市軍

 それから、季節が一巡いちじゅんしたころ

 組織そしき再編さいへんせいを行っていたガイン警備隊は、新設しんせつされた軍隊として生まれ変わっていた。正式な常備軍じょうびぐんとなったガイン警備隊は、名称めいしょうを「ガイン自由都市軍」とあらためた。

 今日は、その設立せつりつ記念きねん式典しきてんが開かれている。私は演説えんぜつたのまれていたため、壇上だんじょうの席にすわって順番を待っている。

 やがて式典しきてん粛々しゅくしゅくと進んでいき、私は静かに演説えんぜつを始めた。

「みなさんはこの国で初の、平民だけで組織そしきされた正式な軍隊となりました。この瞬間しゅんかんに立ち会えたことを、私はほこりに思います」

 私はここで一呼吸ひとこきゅうを置いて、その意味についてかたりかける。

「あなたたちは、平民にやっとあたえられたきばです。だれからの、とは、あえて言いませんが、理不尽りふじん対抗たいこうできる武器です。そして同時に、理不尽りふじんから守るためのたてでもあります」

 そして私は少し声量せいりょうを高め、演説えんぜつを続ける。

「あなたたちは、決して負けることはゆるされません! もし、あなたたちがたおされたその時には、この都市が、そこに住む家族が、恋人が、友人が、 理不尽りふじん にさらされることになってしまうでしょう!」

 さらに声量せいりょうを高め、なか絶叫ぜっきょうするようにしながらオーバーアクション気味ぎみ身振みぶ手振てぶりを加え、演説えんぜつを続ける。

「ですから! あなたたちは! この国で最強の!! 精鋭せいえいにならなくてはなりません!! あらゆる理不尽りふじん退しりぞけ!! あらゆる理不尽りふじんから守る!! 最強の軍に!! ならねばならないのです!!」

 私はここで呼吸こきゅうととのえ、最後に小さく付け加えて、この演説えんぜつめくくる。

「……。いつか、きたるべき日のために」

 そして、私は次の演説者えんぜつしゃに席をゆずった。

 その人はガイン自由都市軍の初代しょだい将軍しょうぐんで、カントという人物であった。

 彼もしずかに演説えんぜつを開始した。

諸君しょくん。私は、多くは語らない。ただ、少しだけ想像そうぞうして欲しい。きたるべき日に、ガイン自由都市軍の一員いちいんとして、活躍かつやくする自分の姿すがたを」

 カント将軍もまた、少し声量せいりょうを高めて続きをかたる。

「しかし、そのためには、我々は最強の軍にならなくてはならない! おそらくその訓練くんれんは、想像そうぞうぜっするきびしさになるだろう。だが、私は全く心配していない。諸君しょくんらの目を見れば分かる。胸に熱いものがこみあげてきているのだろう? 私も同じだ!」

 そして彼は、その野太のぶとい声をり上げてかたりかける。

「その熱さを決して忘れるな!! そして、今、私は諸君しょくんらに許可きょかを出す! こぶしき上げ、大声おおごえを出す許可きょかを!!」

 カント将軍しょうぐんみぎこぶしてんたかき上げ、絶叫ぜっきょうしながら演説えんぜつめくくった。

きたるべき日のために!! オオオオォォォォォ!!」

 彼の雄叫おたけびに続けとばかりに、いっ兵卒ぺいそつにいたるまで全員がみぎこぶしき上げ、雄叫おたけびを上げる。

「「「オオオオォォォォォ!!」」」

 その大気たいきふるわせる絶叫ぜっきょうが、天にとどけとばかりに何度もき上げられるこぶしが、私のむねをも熱くする。

「オオオオォォォォォ!!」

 気づけば私も、雄叫おたけびを上げていた。


 さあ、雌伏しふくの時の始まりだ。