先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第128話 大おじい様
未だ、ガイン自由都市軍の設立の熱狂冷めやらぬ頃。
クレアさんは第二子を出産した。生まれた子供は女の子で、後にリズと名付けられた。
銀髪に緑の瞳という、お母さんにとても良く似たかわいらしい女の子だ。
お兄ちゃんのカズシゲとは異なり、しずしずといった感じで泣く、少しおとなしい感じの赤ちゃんだ。
三歳になっていたカズシゲは、妹ができたことをとても喜んでいた。
「大おじい様、僕はリズが守れるぐらい、強いお兄ちゃんになりたいです」
カズシゲは体を動かすのが大好きなようで、いつも外を駆け回っている。
そして、妹ができたことで奮起し、シゲルに剣を習いたいと申し出たようだ。だが、さすがにまだ幼すぎるため、もう少し大きくなってからと条件付きで許可をもらっていた。
ちなみに、大おじい様というのは私のことだ。
私の里の昔話をしていたとき、祭司長の呼び名がひいひいひいおばあ様では長すぎると感じたため、大おばあ様と説明していた。
そうすると、いつの間にか私の呼び名まで大おじい様になっていたのだ。
なんだか、祭司長と夫婦になったようで少しこそばゆいのだが、悪い気はしないため、そのままにしている。
また、この頃には、私はカント将軍からガイン自由都市軍の訓練メニューについて、相談を受けることもあった。
「胸の熱さが残っているうちに、徹底的に鍛え上げたいですからな」
鉄は熱いうちに打て、ということらしい。
そこで、私は、個人の武勇に関する訓練は将軍に全面的に任せてしまい、連携訓練の重要性について説くことにした。
「個人が強いにこしたことはありませんが、軍として連携できるようになれば、その強さを何倍にもすることができます」
「それは分かるのですが、そこまで重視するほどのことですか?」
この時代の傭兵は魔物ばかり相手にしているため、人間同士の戦いについては不慣れなことが多く、連携について重視していない場合が多い。
パーティ単位のような少人数での連携はしているようだが、部隊単位での必要性が理解できていないものが大半だろう。
一部の傭兵が騎士団に率いられて盗賊討伐をしたことがあるぐらいの経験しかないのである。
そのため、私は大きく一つ頷いてから例を挙げる。
「例えば、個々人でバラバラに戦っている集団と、お互いが連携しあい、カバーしあって戦っている集団を比較してみてください。どちらが相手としてより厄介かは、すぐに答えがでると思います」
私は別の例も挙げる。
「他には、軍として指揮官の命令をすぐさま反映できる場合、このような陣形を作って対応することも可能になります」
私はそのように言って、鶴翼の陣や縦深陣、魚鱗の陣などの説明を行った。
「なるほど。お貴族様には、そのような戦法も伝わっているのですか……」
カント将軍は、うなりながら納得してくれた様子だ。
それからの彼は、厳しい訓練をガイン自由都市軍の各員に課していたが、誰一人として脱落することもなく、みんな訓練に励んでいるらしい。
「初代様の演説が効いていますからな。ガッハッハ」
カント将軍は、そう言って笑いながら、いつも自軍がいかに精強になってきているかを周囲に自慢するようになっていった。