先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第147話 決意
それから、しばらくが経過した頃。
私は、生まれ故郷の森の隠れ里へと里帰りしていた。
新しい子孫の誕生など、祭司長にいろいろと外の世界の出来事を面白おかしく伝えるためである。
祭司長はコロコロと笑いながら、私の土産話を聞いてくれている。
彼女は私よりもかなり年上で、長い年月を生きているはずなのだが、その笑顔は、どこまでも素朴さが残る素敵なものだ。
(ああ……。私はとっくの昔に、この笑顔の虜になっていたのですね)
私はこの時になって、ようやく自分の恋心をはっきりと自覚していた。
その時、ふと、エストの訃報を知らせた時の様子が思い浮かんだ。
エストの旅立ちを知った祭司長は、俯き加減になり、ただ一言、吐き捨てるようにして呟いた。
「これじゃから、先祖返りの長すぎる寿命は、呪いの類じゃというのじゃ……」
その言葉を思い出した時、私はある事実に思い至った。
(私一人ではとても耐えられない子供や子孫たちとの別れも、祭司長様と二人でなら、きっと……)
そこまで考えを進めた後、私はあることを強く決意する。
(いつか、王国での仕事を全て終えた時、その時こそ、私は……)
その時、頭の中でチラリとクリスさんの顔が思い浮かんだ。
私は、心の中でだけ、クリスさんにひたすら平謝りしながら祭司長との楽しい会話を続け、今回の里帰りを終えた。