先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第152話 上下水道
カズシゲが領主に就任してから、四年ほどの歳月が流れ去った頃。
この頃になると、ヘイズさんはすこっちとぶらんでーを完成させており、ガイン自由都市の新たな特産品として、生産と取引が開始されるようになっていた。
一方、ルルさんはと言えば、ケンビキョウとボウエンキョウの研究を完成させていて、こちらも一般販売が開始されていた。
私は完成したボウエンキョウを見た時、ずっと作りたかったものの建設計画を発動させることにした。
この領地をもらった当初から作りたかったもの、上下水道の施設である。
小型のボウエンキョウがあれば、簡単な測量器も作れる。
そして、ガラスの筒に水と少量の空気を密閉すれば、水平器も作れる。
水平器は、この筒を横にした時、密閉された空気の泡が中央に来た時が水平になるという、ごく簡単な仕組みの測定器である。
三角関数などの基礎数学の知識もかなり広まってきているため、三角測量の原理も説明しやすくなっている。
ただ、いきなり下水道を設置しようとすると、いろいろと基礎技術が足りていないと考えられるため、まだ技術的には簡単だろうと思われる上水道の施設から開始することに決めた。
この都市の北側にある川の上流部に上水道の取水口を建設し、下流側に下水道の排水口を設置する計画である。
ただ、当たり前のことになるのだが、水は高い方から低い方にしか流れないため、上水道の取水口にはそれなりの高さが必要になってくる。
そのため、かつてルツ親方に没にされた電動ポンプの設計図を引っ張り出してきて、それを大型化させて設置することにした。
連続稼働が必要になってくるため、私の魔石を搭載する予定になっている。
このようにして入念に準備を進めてゆき、予算枠もしっかりと確保してから、本格的に上下水道の建設計画がスタートした。
領民たちは、まさか平民の一般家庭にまで下水道を設置するとは夢にも思っていなかったようで、さすがは平民の首都の領主様ご一家だと喝采を浴びせてくれた。
ただ、上水道とは言っても川の水であるため、生水の取り扱いには注意するようにと、説明が何度も徹底して行われていた。
領民たちの全面的な協力のもと、建設工事は順調に進んでいった。
しかし、それでも、この都市の人口もかなり増加していたため、全世帯に設置が完了する頃には、実に二十年以上の歳月を必要としたのだった。