先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第156話 ふしだらな大おじい様
それから、さらに季節が一巡した頃。
十六歳になっていたフィーナとティータが、仲良く私の里へと旅行していた。
「「ここが、森の隠れ里デスか……」」
二人が独特な語尾でハモりながら感想を述べている。
同じ語尾でずっと会話を続けている様子は、はたから見ていれば、仲の良い双子の姉妹にしか見えない。
今回は、比較的、順調に旅が進んでいたため、夕食までには若干の時間の余裕があった。そのため、祭司長の小屋にて、私が外の世界の出来事を面白おかしく伝えながら会話を楽しんでいた。
そんな私と祭司長の様子を二人は見ていたのだが、やがてフィーナがティータにヒソヒソと話し始めた。
「この二人、仲が良すぎませんデスか?」
「まるで老夫婦の貫禄デスね」
「でも、それだと、クリスさんはどうなるデス?」
「はっ……。もしかして、デス」
「何か分かったデスか?」
最初はヒソヒソ話だったので、私は聞こえないふりをしていたのだが、少しずつ声量が増していき、このあたりでヒートアップしすぎたのか、結構な大声でティータが叫んだ。
「大おじい様は、各地に現地妻を作るふしだらな人だったデスよ!」
「それデス! 大おじい様はふしだらだったデス!」
とんでもない言いがかりを受けた私は、思わず額に手を当て、天を仰いだ。
私の現地妻扱いをされた祭司長はどんな様子だろうと、そちらをチラリと窺ってみると、腹を抱えてカカ大笑していた。
(ああ……。やっぱり、私は、異性としては意識してもらえていませんね)
私はそんな感想を抱いていた。
悲しくなるのかとも思ったのだが、全く動揺していない自分に気づき、少し驚いていた。
そんなことを考えていると、ふと、クリスさんの笑顔が浮かんできた。
(次にクリスさんがやって来るのは、いつ頃でしょうかね?)
そこまで考えを進めて、はっとなった。
(私はいつの間にか、クリスさんと会える時を楽しみに待つようになっていますね……)
自らの心の内で、クリスさんの存在が、思っていたよりも遥かに大きくなっていることに気づかされた。
(私の心の内堀も、もう既に相当埋め立てられてしまっていますね)
そして、これからのことに思いをはせる。
(今度こそ、時が来たら、私の方からクリスさんに……)
私はあることを、クリスさんに申し込むことを心に決めた。
このようにして、私に不名誉なあだ名が増えそうな一日が、ごくごく平和裏に過ぎていった。