先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第157話 新たな観光名所
それから、さらに一年の時が流れ去った頃。
この頃になると、セネブ村までの街道もかなり整備が進んでいた。しかし、馬車に頼った輸送であるため、思っていたほどの輸送量にはなっていない。
そのため、ガイン自由都市の主要道路のごく一部にのみ、あすふぁるとの舗装がされている状態になっている。
そんなある日。
今日は領主の執務室で業務をこなしていると、仕事が一区切りしたカズシゲが、お茶を飲みながら雑談を始めた。
「そういえば、大おじい様は、また新しい観光名所を作ったのですね」
私はその発言に思い当たる節がなく、首を傾げながら否定する。
「観光名所ですか? そのようなものを作った覚えはないのですが……」
それを聞いたカズシゲが、少し目を見開いて確認を取り始める。
「え? でも、大おじい様が、あすふぁるとの道路を作ったのですよね?」
「それは作りましたが、それと観光名所がどう関係するのですか?」
カズシゲは少し笑顔になりながら、真相を語ってくれる。
「そのあすふぁるとの道路が、観光名所になっているのですよ」
私はその指摘に驚いてしまい、疑問を投げかける。
「ただの道を見て面白いのですか?」
「ただの道ではありませんよ。あれは、継ぎ目のない、一枚岩の道路ですよね?」
「まあ、そうとも言えるでしょうね」
カズシゲは大きく頷きながら、どこが観光資源になるのかを語ってくれる。
「ですから、これこそが伝説の古代魔法文明時代の道ではないかと、もっぱらの評判なのですよ。そこで、伝説の道をぜひとも一目見たいという平民が、多数、訪れているのです」
私はその説明に、なるほどと頷いて同意した。
「今は目新しさもあって物珍しいのでしょうが、いずれは各地にあすふぁるとの道路を張り巡らせたいので、そのうち見慣れたものになるでしょうね」
「大おじい様は、どこまでこの道を作るつもりなのですか?」
私は顎に手を当てて今後の展望を少し考え、それに返答する。
「まずは原油の大規模な精製施設を作ってからになりますが、セネブ村や各種の鉱山、そして、石炭の炭鉱などにも張り巡らせていきたいですね。そうすれば物流が活性化しますから、さらにこの都市は発展できるはずです」
私のこの説明を聞いたカズシゲは、少し呆れ顔になりながら感想を述べる。
「大おじい様の開発は、本当に留まるところを知らないのですね。古代魔法文明の再現まで突き進むつもりですか?」
私はそれに微笑みを返しながら、これから先の展望を語る。
「古代魔法文明とはまた違った形になるでしょうが、例えば、機械を使って自動で布が織れるような、そんな機械化文明を目指してみたいですね」
それを聞いたカズシゲも笑顔になり、後押しをしてくれる。
「そんな夢のような世界を、私もぜひとも見てみたいですね」
いずれは蒸気機関を開発して、産業革命を目指してみるのもいいかもしれないなと、この時、初めて考えたのであった。