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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第187話 八代目の子孫たち

 またさらに、一年ほどの歳月さいげつかさねたころ

 拡大を続けたガイン自由都市は、かつてレオンさんが提案ていあんした街壁がいへき範囲はんいえて街並まちなみが広がっていた。

 そのため、現在ではそのさらに外側に、あらたな街壁がいへき建設中けんせつちゅうである。

 最初に作られた内側の街壁がいへき第一街壁だいいちがいへきばれていて、外側に建設中けんせつちゅうのものが第二街壁だいにがいへきばれている。

 この都市の中心に存在そんざいする領主館の近くが一等地としてあつかわれており、領民たちにとっては第一街壁だいいちがいへきの内側にきょかまえることが、一種のステータスとしてあつかわれている模様もようだ。

 そして、このころになると、リリアさんとシズカが相次あいついで出産しゅっさんむかえていた。

 イサミの最初の子供は女の子で、セリアと命名めいめいされた。黒髪くろかみで青いひとみの、しずしずとおとなしく泣く、両親に似てどこか利発りはつそうな雰囲気ふんいきのある玉のような赤ちゃんだ。

 私はそっとセリアをきかかえながら、この子の将来しょうらい心配しんぱいを始めてしまう。

「生まれたばかりで、これほどの可愛かわいらしさなのです。これは、きっと、成長せいちょうしたら男性たちがセリアをめぐって、壮絶そうぜつ争奪戦そうだつせんを始めるにちがいありませんね」

 そんな私の発言はつげんを聞いて、イサミがクスクスとわらいながら感想かんそうべる。

「大おじい様。こんなに早くから大じじバカな発言はつげんをしていると、周囲しゅういわらわれてしまいますよ?」

 私はそのツッコミに対し、するど反論はんろんくわえる。

「でも、イサミ。セリアが可愛かわいすぎるのは事実じじつでしょう?」

「ええ、もちろん。この子は当分とうぶんの間、だれにもよめにやりません」

 その発言はつげんを聞いて、今度はリリアさんがクスクスとわらい出す。

「あなた、人のことは全く言えませんよ? もう、すでに、かなりの親バカぶりです」

 私とイサミは思わず顔を見合みあわせ、しばらくしてから同時に破顔はがんしていた。

 一方、シズカの最初の子供は男の子で、ザレスと名付なづけられていた。お父さんのザインさんの名前から、一文ひとも拝借はいしゃくしたらしい。

 いとおしそうにが子をくシズカを見て、私は次のような感想かんそういだいていた。

(あの元気にけ回っていたシズカも、母親になったのですね)

 しかし、が子の長所をめるその視点してんは、やはり武人ぶじんのそれであった。

「あなた、この子はすでに、こんなに元気に泣くほど体力が有りあまっているようですし、骨組ほねぐみもあなたにてがっしりとしていますから、将来しょうらい、あなた以上の立派りっぱ戦士せんしになりそうですね」

 立派りっぱなガタイをしているザインさんは、シズカよりもむしろ家庭的かていてきであったようで、別の視点してんで自分の息子むすこ将来しょうらいかたる。

「別に無理むり戦士せんしにしなくてもいいさ。この子ののぞむままの職業しょくぎょうけるように、これから大事にそだてていけばね」

 この子たちや、そのさらに子供たちが、よりゆたかで幸福こうふくな人生がおくれるように、私はこれからも責任せきにんをもって頑張がんばろうと、決意けついあらたにした日であった。