先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第188話 開発目標の優先順位
この頃になると、少し開発のスピードが落ちてきていた。
「やはり、開発目標をちょっと欲張りすぎていますね……」
私はダイガクと共同でジドウシャの研究を進めており、同時に複数の研究内容に手を出していた。しかし、そのために一つ一つの研究に私の手が回っておらず、いろいろと行き詰まりを見せるようになっていた。
「優先順位を決めて開発していきますか」
とりあえず必要になって来るのは、ハンドルやアクセル、ブレーキといった、基礎的な構造だろう。
ハンドルについては、パワーステアリングを目指さないのであれば、それほどの難易度はないと思われる。
アクセルについても、ケントさんが発見した古代の魔道具で得られた無段階調整のプログラムコードが、ほぼそのままの形で応用できるだろう。
ブレーキについては、当初の予定通りに油圧式のものを開発すればいいはずだ。
「その次に目指すのは、『サスペンション』になってきますかね?」
サスペンションについては、やはり、ダンパーと呼ばれる部品が一つの難所になってくると思われる。
これについては、ある程度、腰を落ち着けて開発する以外に方法がないだろう。
「これくらいで、『自動車』の本体は、だいたい開発できますかね?」
私はその次の目標として、自動車が完成した後に必要になってくるものについて考えを巡らせた。
「いくら、あすふぁるとの道路があったとしても、馬車と同じ道路で輸送していたのでは、効率が悪くなるでしょうね」
私は、ここで、自動車専用の高速道路の必要性に気づくことができた。
馬車と自動車ではスピードが違いすぎるため、同じ道路で輸送していたのでは、渋滞が頻発してしまう可能性が高いと思われる。
「とりあえず、セネブの町までの施設を最優先として、高速道路網の建設計画をリョウマと相談してみましょう」
高速道路の運用だけでなく、街中で自動車を走らせるためには、様々な法整備も合わせて必要になってくると気づく。
ウィンカーなどの基本的な機能に関する規制も必要になってくるだろう。
「その他には、速度制限などの各種の道路標識、『信号機』や『横断歩道』も設置が必要になってきますね」
信号機については、すとっぷうぉっちやトケイの魔道具を応用して、空ループを利用すれば作れるはずだ。
速度制限などと合わせてこれらを守りながら運転をさせるためにも、免許制度の整備も必要になってくるだろう。
「今すぐでなくても構いませんが、これは、各種の法整備だけでも、かなりの大仕事になりそうですね……」
こうして、私は、各種の目標の優先順位の設定を終え、一歩ずつだが着実に、さらなる近代都市へと向けての歩みを進めたのであった。