先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第200話 魔石不足
蒸気機関の研究は、ゆっくりとではあるが着実に進んでいた。
現在では、複数のシリンダーを連結した模型で実験が続けられている。後はこれを徐々に大型化させていき、機関車に搭載できるように応用するのが、今後の目標である。
その一方で、ガイン自由都市では、魔力もーたーを代表とする魔道具の利用が拡大を続けていた。
その影響で魔石の需要が急拡大を見せており、価格の高騰が続いている。中でも、多くの魔力を含んでいる大型の魔石の需要が高くなっており、不足が目立つようになっていた。
小型で大量の魔力を含んでいる、森の里で産出している魔石に至っては、もはや天井知らず言っていいほど価格が上昇し続けている。
これらの要因により、これまでは使い捨てにしていた魔石を回収する業者が現れるようになっていて、魔石の再利用が急速に進んでいる。
魔力の充填ができる少し多めの魔力持ちにとっては、簡単に稼げる仕事が増えたようだ。
ただ、ある程度以上、魔力密度を高めることがヒム族にとっては難しかったため、低い密度で多くの魔力を込めることができる、大型の魔石に人気が集中している。
大型の魔石を利用すれば、ヒム族であっても、何日かに分けて充填することにより、多くの魔力が込められたからだ。
再利用が進んだとはいえ、まだまだ魔石の不足が目立っており、領主館の運営会議で議題になるほど問題化し始めていた。
その席で、領主のイサミが私に相談を持ち掛けていた。
「大おじい様、森の隠れ里のみなさんに、もっと魔石を作って欲しいとお願いすることはできませんか?」
私はしばらく腕組みをして、ウーンとうなりながら中空を見つめて考えを巡らせ、それから否定的な意見を述べる。
「お願いすれば、いくらかは増産してくれると思います。ですが、あなたも知っての通り、里のみんなは無欲ですからね……。不足が解消できるほど大量生産してもらうのは、ちょっと難しいでしょう」
私の結論を聞いた官僚たちの間から、溜め息が零れる。
私は顎に手を当ててまたしばらく考え、思いついた代案を提案してみる。
「そうだ。クリスさんの里のみんなにお願いしてみてはどうでしょうか? あの里には鉄製品がありませんから、それと交換してもらうことを条件に、なんとか交渉してみましょう。ただ、あの島にはあまり魔物がいませんから、魔石はこちらから持ち込む必要がありますが」
イサミは少し笑顔になり、みんなを代表して私に交渉を託す。
「それはいいアイデアですね。その方向で、大おじい様に交渉をお願いしても構いませんか?」
私は大きく頷きを返し、了承の意を伝える。
「ええ、もちろんです。仕事を理由に堂々と愛しい人に合ってきますので、ちょっと日程に余裕さえもらえれば、喜んで飛んでいきますよ?」
私が大真面目な顔でそのように惚気ると、その場に少し笑いが巻き起こった。